過去と未来の間

アクセスカウンタ

zoom RSS 東京新聞の社説は、感動的である。

<<   作成日時 : 2006/02/05 08:27   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 2

 本日の東京新聞社説は、ぜひ多くの人々に読んでいただきたいと思い、全文掲載させていただきます。著作権に抵触するかもしれません。心配ですが、しかしこの社説は、多くの人に読んでいただきたいという気持ちから、掲載します。東京新聞からカットせよといわれたらカットします。

http://www.tokyo-np.co.jp/sha/

敗れる前に目覚めよ

 目をしっかり開け、歴史のフィルターを通して今を見つめなければ、正しい判断も進歩も生まれません。戦艦大和で散った人たちの悲痛な叫びが聞こえます。

 「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじすぎた。…本当の進歩を忘れていた。敗れて目覚める、それ以外に日本がどうして救われるか。今目覚めずしていつ救われるか。俺(おれ)たちはその先導になるのだ。まさに本望じゃないか」

 一九四五年四月、生還の見込みがない沖縄海域への特攻出撃を前に、戦艦大和の艦内で死の意味をめぐり煩悶(はんもん)、激論する同僚たちを、臼淵磐大尉はこう言って沈黙させました。

■必敗を覚悟した大和特攻

 もし、この臼淵大尉が昨今の日本社会を見たら何と言うでしょう。

 大和の特攻は、制海、制空権を奪われ、敗戦間近いことが明らかな情勢下で、片道分の燃料しか与えられず、戦闘機の護衛なしに臨む戦いです。合わせて三千人を超える将校、下士官、兵士たちの誰もが「必敗」を覚悟していました。

 臼淵大尉は死を美化したのではありません。科学的、合理的思考を放棄し、誤った精神主義で無謀な戦争を始め破滅に導いた国の指導者を暗に批判したのでしょう。そして、日本人がその愚に気づいて目覚めることに、自分たちの死の意味を求めたのでしょう。

 彼の発言には深い深い思いが込められていました。目前の戦闘に負ける意味だけではなく、「失敗」によって目覚め、教訓を得ることの重要性の指摘です。

 数少ない生還者の一人、吉田満氏(当時少尉)の名著「戦艦大和ノ最期」にこの場面は感動的に描かれています。昨年暮れから正月にかけて百数十万人の観客を集めた映画「男たちの大和」でも、かなりの時間を使って紹介されました。

■継承されない先人の教訓

 しかし、大尉役の元プロ野球選手の未熟な演技、大尉の言葉の重さに気づいていそうもない平板なセリフ回しでは、大事なメッセージが伝わりません。スクリーンの前の人々はほとんど無反応でした。

 観客、とりわけ若者たちには「敗れて目覚め」た先人の教訓が継承されていないように見えました。

 継承していないのは若者だけではありません。侵略戦争に駆り立てた責任者を、駆り立てられた人々と同列に祭っている靖国神社に参拝し、中国などからの批判に「罪を憎んで人を憎まず」と開き直った小泉純一郎首相に至っては、目覚めてもいないと言わざるを得ません。

 大和に特攻作戦を伝達にきた連合艦隊参謀長に、大和とともに出撃する駆逐艦の若手艦長が迫ります。

 「なぜ連合艦隊司令長官らは防空壕(ごう)から出て作戦の陣頭指揮をとらないのか」

 このシーンには現在の改憲論議が重なります。自衛隊を自衛軍にして海外派兵も可能にする自民党の「新憲法草案」をつくったのは、自らは銃をとらない国会議員たちでした。いつの世も犠牲を強いる側は大抵、安全地帯にいるのです。

 米軍の猛攻で沈んでゆく艦内で、兵士が「命をかけて戦ったが何も守れなかった。家族も、故郷も…」とつぶやきます。

 これに対し、自民党草案の前文に国民が守るべき対象として掲げられたのは「帰属する国や社会」です。“滅私奉公”を強制されたあの時代でさえ兵士たちが守ろうとした、家族のことには触れていません。

 歴史研究家の半藤一利さんはベストセラーとなった自著「昭和史」について「歴史を振り返りつつ読者に伝えたかったのは“今を見る目”をしっかり持つことだった」と語り、日本人が目をきちんと開くよう求めています。

 自由にものが言えなかった戦時中と違って言論の自由も参政権も保障されています。土壇場で「なぜ?」「そんな!」と後悔しないように、有権者、特に今後の日本を背負う若者はもっと声をあげましょう。

 学ぶべきは古いことだけではありません。自民党は九・一一総選挙で虚業家だった堀江貴文ライブドア前社長の生き方を推奨モデルとして宣伝し、同調した有権者も少なくありません。バブル経済崩壊で苦い思いをしたのはつい最近なのに…。

 改革の旗手のように振る舞う竹中平蔵総務相(当時金融財政担当相)が同容疑者の応援に駆けつけたのは象徴的でした。社会的弱者への配慮より強者の自由を優先し、過度な格差拡大も放置する−堀江容疑者の考え方と小泉内閣の改革路線には共通点があるからです。

■今度こそ…のメッセージ

 昭和の初期、革新官僚、革新将校と呼ばれた人たちが日本をしだいに泥沼へ引きずり込んでいった、歴史上の事実を思い起こします。

 臼淵大尉のメッセージが「今度こそ敗れる前に目覚めよ」と聞こえます。改憲、改革の連呼による集団催眠からさめ、改や革の字に潜む真実を見極めなければなりません。




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
紹介ありがとうございます。少しずつ、いや、大きく? どちらかはわかりませんが、状況が変化しつつあるようです。あまりにもひどく揺れた昨年の状況からの揺り戻しが・・・。そのほころびがあちこちで露呈してきているようです。もちろん、今後もしっかり見つめていく必要はありましょうけれど。
Kazuo
2006/02/05 17:07
 こういう内容があって、格調の高い社説には、最近出会いませんでした。批判すべき社説は数多ありますが、共感する社説は本当に減っています。マスメディアの奮起を期待します。
【善】
2006/02/05 18:37
東京新聞の社説は、感動的である。 過去と未来の間/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる