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zoom RSS 〈東京新聞〉から 「ベネズエラ・チャベス大統領 人気の真相」

<<   作成日時 : 2006/12/10 08:38   >>

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 日本のマスコミの視点の多くは、アメリカの目線での報道がい多い。たとえば、キューバのカストロ首相の病院での姿がテレビで報道されると、「健在ぶりを示すもの」などと若干の悪意を交えたコメントが流される。
 今日は、ベネズエラ・チャベス大統領の姿が、「偏見」なく記されているので、ここに紹介する。


 南米ベネズエラのウゴ・チャベス大統領(52)が三日、60%を超える高得票率で三選を果たした。「反米のカリスマ」「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」−。チャベス評価は分かれ、日本には人気の実像が伝わりにくい。チャベス人気の原因、さらにそれは中南米で相次いでいる左翼、中道左派政権の誕生とどう絡んでいるのか。中南米ウオッチャーたちに聞いた。 (中里宏)

 ことし九月二十日、国連演説でチャベス大統領が米国のブッシュ大統領を「悪魔」と呼んだ様子は、日本でも新聞・テレビで報じられた。国連はチャベス氏の格好のパフォーマンス会場となったが、中南米に関する著書も多い「現代企画室」編集長の太田昌国氏は「日本のベネズエラ報道はチャベスの派手なパフォーマンスのつまみ食いばかり。彼が国内でどんなことをやってきたのかが伝わっていない」と苦言を呈する。

 では、チャベス氏はどういう経緯で大統領になり、何をしてきたのか。

 アルゼンチン出身の革命家、故チェ・ゲバラの娘アレイダ・ゲバラ氏がまとめた「チャベス」(邦訳・作品社)などによると、チャベス氏は貧しい教師の家庭に生まれた。祖母のつくるお菓子を学校で裕福な同級生に売り、果物を行商して家計の足しにしていた。

 高校卒業後、陸軍士官学校へ。その後、配置された国境地帯で、ゲリラ掃討の名目で農民を裁判なしで処刑する軍隊に疑問を持ち、社会矛盾に目覚める。

 やがてチャベス氏は、ベネズエラ出身で十九世紀に南米北部をスペインからの独立に導いた革命家シモン・ボリバルに心酔。「人民に銃を向けないボリバル主義の軍隊をつくろう」と秘密裏に同志を増やした。

 一九八九年、公共料金や石油の大幅値上げが原因で首都カラカスで大暴動が発生。市民数千人が軍や治安部隊に殺害される惨事となり、蜂起の準備は加速。

 三年後の九二年、降下部隊司令官になったチャベス氏は当時のペレス政権に対するクーデターを起こすが失敗し、投獄。九四年にカルデラ政権の恩赦で釈放されると、本格的な政治活動を開始し、九八年、「貧者救済」を掲げて初出馬した大統領選で、貧困層の支持を受けて圧勝した。

 当時の状況について、今夏「革命のベネズエラ紀行」(新日本出版社)を出版した明治大非常勤講師の新藤通弘氏(ラテンアメリカ現代史)は「国民の大多数が経済と社会政策から排除されていた」と話す。

 新藤氏の調査によると、当時ベネズエラでは国民の七−八割が貧困層で、このうち半数は一日一ドル以下の生活。非就学率は30%に達し、六割の国民が医療の恩恵を受けていなかった。

 その後、反チャベス派によるクーデターなどを乗り切ったチャベス政権は、輸出量世界五位を誇る石油の収益をつぎ込み、貧困対策を次々に打ち出した。

■無料医療・給食 生活品は半額

 それは、キューバ人医師約二万五千人を受け入れ、全国の貧民地区で無料医療活動▽百五十万人の非識字者を対象にした識字教育▽大学教育希望者や中学課程未就学者への支援(夜間学校など)▽小学校の無料給食▽全国二千カ所に市価の約半額で生活必需品を売る「メルカル」開設▽女性グループに起業資金を低利で融資する「女性銀行」制度の新設−などだ。

■新自由主義に国民ウンザリ

 チャベス政権のこうした貧困対策が、折からの原油価格高騰に支えられているのも事実。同氏が欧州連合(EU)のような南米統合を目指していることもあり、“裏庭”での同氏の言動に神経をとがらせている米国は「オイルマネーを使ったポピュリズム」「南米の不安定要因」といった批判を繰り返している。

 これに対し、中南米情勢に詳しいジャーナリストの伊高浩昭氏は「ベネズエラで石油が発見されたのは八十年以上前。チャベス以前は富裕層が利権を握り、貧困対策に使われたことはなかった。そこを忘れてはいけない」と指摘する。

 前出の太田氏も「石油輸出の代わりにキューバから医療・識字教育の支援を受けるなど、相互扶助、相互補完に貫かれた国家戦略は世界経済に弱肉強食ではない、もう一つの道があることを示している」とみる。

 ことし三月にベネズエラを訪問した龍谷大講師の広瀬純氏(哲学)は「単なる富の再分配ではなく、共同体づくりなど貧困地区の住民にやる気を起こさせる狙いで、分配しようとしている」と注目する。

 ただ、「チャベスの母体の『第五共和国運動』は左派から中道までの寄り合い所帯で考え方もバラバラ。政権基盤が強いとは言えない」(伊高氏)という見方は多く、反チャベス勢力も依然、力を維持する。

 二〇〇二年には同政権に反対する経済界主導のゼネストと軍の反チャベス派によるクーデターが相次いで発生。チャベス氏は拘束され、当時の経済団体会長が大統領就任を宣言したが、チャベス派の巻き返しでクーデターは数日で失敗。

 同十二月には石油公社のストで国家財政が危機的状況に陥り、〇三年一月、政府が自主運営に踏み切った。石油を手にしたチャベス政権の貧困対策が本格的に始まったのは、その二カ月後の同三月からだ。

 今回の選挙でチャベス氏は任期中の二〇一〇年に国民投票を行い、大統領の連続再選を二回までとする憲法の改正を公約。「独裁傾向の現れ」との批判も受けたが、貧困層の支持で圧勝し、当選後は「二十一世紀の社会主義」を訴えた。

 中身はまだ不透明だが、伊高氏は「ひとつだけ分かっているのは、それを自由選挙でつくろうとしていることだ」という。

 中南米で相次ぐ中道左派政権の誕生とチャベス人気の原因は何か。多くの中南米ウオッチャーは一九八〇年代からの新自由主義(ネオリベラリズム、市場原理主義)の失敗を挙げる。

 膨大な対外債務を抱えた南米諸国は、米国が主導する新自由主義政策の導入を国際通貨基金(IMF)などから求められた。民営化や市場原理の追求、規制緩和、労働条件の柔軟化などがそれで、これらの動きは九〇年代に加速した。

 その結果、公共料金は大幅に上がり、アジア・アフリカより悪かった南米の貧富の格差はさらに拡大。新藤氏は「中道や中道左派政権が誕生した選挙では、すべて新自由主義が争点となった。小泉改革で格差が広がる日本も決して無縁の話ではない」と語る。

 こうした背景で政権を手にしたチャベス大統領。太田氏はこう分析する。

 「評価は二つに分かれる。独裁傾向を危ぶむ意見はあるだろう。しかし、それ以上に中南米には圧倒的な貧困層と少数の富裕層という現実がある。社会的公正の観点は不可欠だ」

<メモ>ベネズエラ・ボリバル共和国 南米大陸の北端に位置し、国土は日本の約2・4倍、人口約2600万人。人種は混血(メスティソ)66%、白人22%、黒人10%、先住民2%。輸出量世界5位の石油のほか、天然ガス、鉄鉱石、ボーキサイトなど豊富な資源を持つ。貿易相手国は輸出入とも米国がトップ。

<デスクメモ> 世界の潮目は明らかに変わりつつある。中南米で米国がこけた背景には中東での泥沼がある。潮目が読めないわが国の官僚たちは、イランでの自主開発油田も事実上中国に売り渡した。激動が読めないと、為政者たちは稚拙なナショナリズムに走りたがる。その無残な結末は六十余年前に体験したはずなのだが。(牧)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20061210/mng_____tokuho__000.shtml

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