【本】スティーヴン・ハウ『帝国』(岩波書店)

 今「帝国」は考察の対象にならなければならない。それは、まず一つには現在のアメリカ合衆国をどう捉えるかという問題であり、もう一つは日本という国家を歴史的に、同時に空間的に(一国史ではなく、少なくともアジアの中で)捉えるためである。

 最近刊行されつつある岩波講座の『アジア・太平洋戦争』(全八巻)も、日本のアジア太平洋戦争を、帝国の視点から、当該戦時期に拘泥せず近現代の歴史からとらえること、同時にアジアを中心とした国際的な視点からとらえること、それらを試みようとしている。これらの視点は、私が地域の近現代史において意識的に追究し、また書いてきたことでもある。問題意識として、同様のものがでてきるのだなあという感慨を覚える。

 先に指摘したように、私は今、地域から「大日本帝国」を浮かび上がらせるという作業を行っている。そのために、現代の「帝国」、過去の「帝国」について俯瞰しておかなければならないと考え、本書を読んだのである。なお読むのは、二度目である。

 近現代の「帝国」については、現在の問題でもある。「帝国」として植民地を領有した国々は、相対的に豊かであり、逆に植民地とされていた国は、例外はあるが、多くは貧困となっている。この現状を科学的にとらえるためには、近代・現代の「帝国」のあり方を見ておかなければならない。

 そのための手段として本書を繙いているのであるが、「帝国」を考える上で参考になる内容となっている。
 「帝国とは、もともとの国境線の外部になった領土を支配する巨大な政治体である」、「帝国はまた、多くの場合、それどころかおそらく典型的に、暴力によって確立され、維持される」、「帝国は大部分が征服によって、支配する「中核」と、支配され、しばしば経済的に搾取される「周縁」から形成される」、「近代の帝国体制では(おそらく多くの古代の帝国でも)、支配する中核の住民は、政治的に従属する周縁の住民と文化的にはっきり違っており、自分たちの方が優れていると信じるのが一般的であった」などという文が並ぶ。
 もちろん「帝国」と「植民地支配」のとらえ方は一つではない。本書はそれについての目配りもされている。
 
 私が考えている「帝国」論にとって、知的触発があった。これ以上の論点を示すことはしないが、これは参考になる本である。厚い本ではない。
  (1400円+税)








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