【本】佐藤卓己『メディア社会ー現代を読み解く視点』(岩波新書)

 この本は一読の価値ありである。既知であることが再認識され、また新鮮な知識により触発を受ける。全部で50のテーマで書かれており、それぞれ教えられることが多い。読みやすく、短時間で読むことができる。

 「消費社会とはすべてのモノ、コト、ヒトが広告(情報発信)の媒体となる社会」(4p)であり、そのような社会に私たちは生きている。多くの情報に取り囲まれてるのであるが、しかし「「情報」が「敵情についての報告」を意味する軍事用語から生まれた事実」(27p)を、私は知らなかった。

 「マス・メディアの機能の一つは、人々の記憶を共通の歴史に繋ぎとめることである」(90p)という指摘も、なるほどなあと思う。しかし、「誰でも利用できる情報量が増大しても知識格差は解消せず、むしろ拡大する。なぜなら、情報処理に未熟な人々は大量の情報を選別できず、それに習熟した人との情報利用格差は拡大するからだ。これによって両極化される情報富裕層と情報貧困層は、価値観や行動様式の溝を深めていくことになる」(180p)。

 そしてそのメディア報道において、「中国や韓国との報道において、靖国問題や竹島問題など対立点のみ強調され、両国の合意点が詳しく解説されることはない。ここでもメディアは合意点を飛び越して対立点のみを追いかけていないだろうか。合意点を適切な文脈で詳しく解説し、人々を「嫌韓」「嫌中」の冷笑主義ではなく友好的対話へと導く熟慮のジャーナリズムが必要なのではあるまいか」(109p)に、私は賛同する。

 そしてまた「世論とは、論争的な争点に関して自分自身が孤立することなく公然と表明できる意見である。あるいは、世論とは孤立したくなければ、公然と表明しなくてはならない態度や行動である」(132p)と定義する。
 「マス・メディアが特定の意見を優勢と報じると、それと異なる意見をもつ人々の沈黙を生み出し、その沈黙がメディアの報じた判断の正当性を裏づける」(131p)とするなら、やはり私たちは、少数の考えであろうとも、公表し続けなければならないということになる。

 そこで、大いに議論すればよいのである。

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