【本】木下和寛『メディアは戦争にどうかかわってきたか』(朝日新聞社)

 国家権力は戦争においてどのようにメディアを利用してきたか、あるいは利用できなかったかを、歴史的に検証したものである。いろいろな事例を豊富に揃え、また関連文献をかなり渉猟した様子で、一読の価値ありである。

 アメリカはイラク侵攻において、効果的にメディアを利用した。記者を自軍の中に“埋め込み”「従軍」させ、米軍の一員であるかのような気持ちを記者たちに抱かせた。
 とくにテレビの場合は、どちら側からどちらへ向けて画像を撮るかはきわめて重要である。見る者の視点を、アプリオリにテレビの側が設定して視聴者に送り届けるからだ。視聴者は、視点を選べない。米軍の部隊から撮影すれば、自ずから「敵」はイラクになってしまう。

 しかし、逆に反対側から撮れば、一方の報道はある程度中和される。中東における「中和剤」の役割を果たしているのは、アルジャジーラである。アルジャジーラの報道は、アメリカの報道への重要な異議申し立てであった。だからこそ、アルジャジーラは米軍からにらまれ、また攻撃もされたのである(「アメリカは自由の国」だそうだが、何度もアルジャジーラに文句を言っていたようだ。)。日本のメディアは、アメリカに非難されたことがあるのだろうか。


 アメリカでは、テレビは「好戦的な愛国心に流されがち」であった。「新聞は、流れに抗する「反対意見」の牙城となってきた。イメージで感情に訴えるテレビに対し、文字によって知性と理性に訴える新聞の特質である」と“あとがき”にあるが、私はもはや新聞にもそんな特質はないと思う。

 いずれにしても、マスメディアは、ジャーナリズムの精神をもはや持ってはいない。どういうメディアを民衆がもてるのかを考えていかなければならない。


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