ふむふむ、「旅をしない若者たち」

 オーマイニュースに「旅をしない若者たち」という記事が載せられていた。 http://www.ohmynews.co.jp/news/20080219/21118  そこに掲載されている統計にも、海外旅行にしめる20代の比率が低いことが紹介されている。なぜなのか。  私は、まず地理的な認識がないことがあげられると思う。今の若者の頭の中には、地図がない。どこの国がどこにあるのか知らないのだ。  若者と話していて、ある特定の国のことを話していても、話しているとその国がどこにあるのかを知っていないということに気づくことがある。だって、イラク戦争が起きた時、某政治家だってイラクの位置を言えなかった。  基本的に、若者は外国についてはあまり興味をもっていないのだ。日本のマスコミだって、くだらない国内ニュースをこれでもか、これでもかと流すのに、外国のことは流さない。唯一流すのはスポーツ、それも日本人の活躍ばかり。  先年、高等学校で必修である世界史が教えられていないと、高校がバッシングされていたが、世界地理を教える時間が小学校から中学校までないのに、高校に入って突然世界史が必修だとされる子どもたち。ギリシャ、ローマとかいわれても、どこにあるか地理的認識がないのに、ギリシャの歴史は・・・・などと教えられる。これでは、外国なんかきーらい、となるのは当たり前。  もちろん学校で教えられないから地理的認識が育たないと言っているのではない。多くの子どもたちは、今学校以外で知識を得る…

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中学校は大変だ

 中学校の先生は大変だ。私の周辺にも、中学校の教壇に立ったことがある者がいる。彼女によると、帰りは夜間10時頃のことが多かった、という。授業をめいっぱいやり、その間に給食の会計係をやっていたので給食関係の業者との折衝、そして「総合の時間」の準備、そして部活動・・・・・  今度また学習指導要領が変更されるという。今度は「卒業論文」を導入する、というのだ。しかし中学生が何の指導もなく書くことはできないから、また新たに指導しなければならないことになる、つまりさらに忙しくなる。  中教審は、これまでも教育に関していろいろ変えてきたが、委員の「思いつき」が上意下達的に現場に降ろされてくる、というのだ。こんなに右往左往する教育のあり方は、教育にとってマイナスではないか。たまには、現場からの声を教育政策に反映させることはできないか!と彼女は怒っていた。 中学は必修時間1割増 中教審、卒論も提案 2007年8月31日 13時29分  学習指導要領の改定作業を進めている中教審の中学校部会は31日、選択教科や「総合的な学習の時間」を減らし、週1時間(1単位時間は50分)の授業増により、国語や数学など必修6教科の授業時間を1割程度増やす素案をまとめた。  授業時間増の方針を30日に示した小学校と同様、授業削減の流れを転換し、ゆとり教育を部分修正する。総合学習については、内容を見直し、3年間の学習成果をまとめる「卒業論文」の導入も提案する。  素案によると、週1時間授業を増やし総…

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教育「再逝」会議(その3)

 下に挙げた項目は、どういうことか。  あるべき目標を設定し、学習の結果どの程度まで「到達」したかで成績をつけるという意味であろうが、「あるべき目標」を「国」すなわち「国家」が決定するのであろうか。  戦前の教育を反省して、日本国憲法では国家の教育権から「国民の教育権」に転換しているはずであり、またその憲法は生きているにもかかわらず、国家が教育の「各教科の到達目標」を決定してよいのだろうか。  ○国は、各教科の到達目標を示し、学校はその到達目標を基準にして客観的に絶対評価(※)を行う。  ※絶対評価:学年や学級の中での相対的な位置、序列を見る相対評価に対して、それぞれの学年や学期で達成すべき到達目標に照らしてどの程度修得できたかを見る評価。  次に、教員養成に関して次の事項も大きな問題である。権力欲に凝り固まった人間を育成する「松下政経塾」に似た、現在杉並区で行っているような「教師塾」を教育委員会が設置して、そこで「学んだ」人を教師に採用していくというのであろう。いったい「教師塾」でどのような講義が行われ、どういう教師をつくり出そうとするのか。おそらく教育委員会などに忠実な教師の育成をめざすのであろうが、怖い時代になったものだ。  ○国、教育委員会は、ITの授業への活用など授業方法の改善のための研修を充実する。また、教育委員会は、教師塾など採用前から質の高い教員を養成・確保する取組を推進する。  それから「徳育」の出現。これについては「東京新聞」の社説を掲げた…

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教育「再逝」会議(その2)

 同会議の第二次報告に、こうある。    提言2 全ての子供にとって分かりやすく、魅力ある授業にする【教科書の分量を増やし質を高める、主権者教育など社会の要請に対応した教育内容・教科再編、全教室でITを授業に活用、「教育院」構想、全ての子供一人ひとりに応じた教育】  このことばを読むと、何の問題もないように思える。問題は、こんな抽象的なことを云々するまえに、しっかりと現場からの声を聞くべきである。  昨年「世界史」を高校で教えないのは問題だ、こんなグローバル化しているのに「世界史」を学ばせないのはおかしい、などという批判があった。良心的な批判もなされていたが、しかし世界史を教える前に、世界地理がそれまでの教育課程でほとんど教えられていないのである。  自民党の某国会議員がテレビの番組でイラクの位置を正確に答えられなかったことがあったが、今の若者で答えられる者はどのくらいいるだろうか。アフガニスタンやイラクで戦争が起きていても、そもそもそれが世界のどこにあるのかも知らないのである。況や、「世界史」で教えられる世界各地の歴史が、地球のどの当たりの歴史であるのかの認識のないまま教えられているのである。  まったく教育課程に脈絡がないのである。教育課程を作成するときには、現場の教員や研究者をしっかりと議論させるべきである。それなしに文科省は、自らの意図を入れやすい人々を審議委員に任命して議論させ、机上の空論をもてあそび、それを学校におろしてくる。  今回のように、教育については…

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教育再生会議ならぬ、教育「再逝」会議

 今日の新聞に、教育再生会議の第二次報告が出されたという報道があった。その報告をすべて読んでみた。  これでは「再生」ではなく、「再逝」ではないかと思った。その根拠はいろいろあるが、まずその一つは、 ○国は、国語教育の充実とともに、中・高等学校の英語の授業時数、単語数を増やし、小学校に英語教育を導入する。外国人講師の活用を拡大する。 文科省は、以前から英語教育を重視するといってはいたが、では中学校の週当たりの英語の時間は何時間であったのか。週3時間である。そこに外国人講師の英会話が1時間はいる。これでは英語の力はつかないから、子どもたちは塾や予備校に通う。  英語を重視するといっても、一週間の授業時間は総枠がある。だから、増やすことはできない。特に現在は、総合の時間や選択の時間といった通常の授業とは異なる授業があるから、増やせない。   小学校で英語を導入するという場合、総枠が決まっているから何を削るのだろうか。削らないとしたら、土曜日に授業をするということにもなろう。しかし文科省は、おそらくカネを出さないから、これは保護者の負担になるのではないだろうか。近所の普通高校では、土曜日に補習をやっているが、それは保護者負担である。  そして外国人講師。現在外国人講師の月給は30万円(一日の労働時間は、7時間。彼らの仕事は、だいたい1年生の英会話を担当するが、それは週1時間であるから、1年生のクラス数だけの授業をする。8クラスなら8時間。それ以外の仕事はない。)。私…

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『現代思想』4月号特集「教育の未来」 を勧める

 『現代思想』(青土社)は、ずっと購読している。今月号の特集は「教育の未来」。最近教育の特集が多いなあと思って、BNをみたら、毎年4月号を教育にあてている。「教育」が、“現代思想”にとって重要な課題になっていることを感じる。今日到着したばかりなので読んではいないが、最近の教育の状況をみていると、「悪化」としかいいようがない。「教育再生会議」などを設置して議論はしているが、そこでだされている内容は「悪化」に手を貸すようなものだ。  『現代思想』の「編集後記」にあるように、教育をよくしたいなら、もっと教育予算を増やす、そして先進国並みにする、つまり1学級当たりの生徒数を減らす、教員を増やす・・・という措置をとればよい。文科省や地方自治体は、マスコミなどで流布されている「教員悪者説」を追い風に、教員の給与を下げ(実際、40代以下の教員の給与は、おどろくべき数字である。昇級がほとんどない、という)、非常勤を増やし、教育予算を減らし・・・・・・と、まったく逆のことをしている。学校や教員を管理統制するための出費は増やしているが、子どもの教育に関わるカネは減らす。  私は、おそらく文科省は、「新自由主義」というイデオロギーにもとづき、公教育を破壊しようとしているのではないか。有産者の子どもは、私立に行かせてしっかりと教育を受けさせる(もちろん受益者負担で)、そうでない子どもは、「どうにでもなれ」。「そうでない子ども」が通う学校の教員たちも、「どうにでもなれ」。  今の政策が展開されていけば、日…

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【本】諏訪哲二『なぜ勉強させるか?』(光文社新書)

 『下流志向』を読んだなかに、諏訪哲二の著書が引用されていた。しかしその本がなかったので、出版されたばかりのこの本を購入。副題に「教育再生を根本から考える」とあった。  鳴り物入りで発足した安倍政権下の「教育再生会議」。戦後の教育に関わる様々な歴史、現在の子どもの現実、学校の姿、あり方、子どもをとりまく状況など、ほとんど知らず、認識せず、まったく「時流」にのった議論が「再生」され、「時流」が求める方向にただ行かせるだけの会議。その委員の方々に、読んでいただきたい本である。もちろん、教育関係者、親など、ありとあらゆる人に読んでいただきたい。  長年埼玉県で高校の教壇に立っておられた諏訪が、その蓄積と、教育に対する鋭い問題意識にもとづく。教育に関する無責任な放言によってつくられた「時流」にのった議論に対して、鋭く切り込んでいる。  私は、諏訪の「やはりまず親が学校を信頼していなければならない。そのことが子どもに伝わらなければならない」、「まさに(全国民が当事者意識を持って)やらなければならないのは、学校や教師への信頼の回復なのである。」(118頁)は重大な提言であると思う。  高校の教頭をしている友人に聞いたのだが、「教育再生会議」などが「ダメ教師」を追い出すためといって、教師評価を推進しようとしているが、そのための労力は想像を絶する、燻りだそうとする「ダメ教師」の数は、圧倒的に少ないにもかかわらず、である。どうしようもない「ダメ教師」はある程度わかる、「時流」にのって、教育現…

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ごまかし勉強法

 今日、教育基本法改廃の背景についてあるところで話をしました。その際、利用した本の名を思い出せなくて、紹介できなかったので、ここに紹介しておきます。  それは、藤澤伸介『ごまかし勉強』上・下(新曜社)です。学習指導要領の変化で、学ぶ量が大幅に減ったことを話すときに、いつも使用するのですが、年のせいかこの本の書名がでませんでした。。  その上巻の81頁に、「1967年代の中学理科教科書(中学三年間)」と「1996年代の中学理科教科書(中学3年間)」の化学式の比較があります。1967年代には、化学式は54登場していますが、しかし、1996年ではたった12です。元素の数だけで比較すると、大きな差がでます。  その後に次のような記述があります。  ・・・これで見る限り、化学式は八割がたカットされています。これは記憶偏重型の教育から思考力重視の教育を目指しているためです。目標は結構なのですが、「学習対象を減らせば記憶偏重でなくなる」という発想はあまりにも安易です。このことは第2章でも話題にしました。実際、かつての教科書に出ているすべての化学式を機械的に暗記することは不可能です。でも受験で必要ということになれば、どうするでしょうか。結局これだけの化学式を成立させている原則を理解する必要が出てきます。イオンの意味、化学反応の原則、係数のつけ方など、充分に頭を働かせて基本原則を理解すれば、機械的に暗記しなければならないことはごくわずかになります。ですから、実例がたくさんあると基本原則の理解…

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【東京新聞・社説】 気になる『愛国教育』

 「国を愛する態度を養う」ことが教育の目標に加えられました。さまざまな危うさを感じます。「いつか来た道」にならないか。ことし一番心配になったことです。  「改正教育基本法などは、戦後レジーム(体制)から脱却して、新たな国づくりをする礎です。この国会での成立は大きな第一歩です」  安倍晋三首相は、臨時国会後の記者会見で満足な表情を見せました。  長年の念願だった教育基本法が五十九年ぶりに改定され、目標として「我が国と郷土を愛する…態度を養う」(第二条)という文言が盛り込まれたからです。  しかし、国会審議が順調にいったわけではありません。 ■ 戦前の教訓を忘れずに  「『国を愛する態度』とは、歴史や文化、伝統、自然を愛する気持ちをはぐくむことだ。統治機構としての国が行うことを愛せよということではない」  安倍首相は、こうした答弁を何回も繰り返しました。「愛国教育」に数多くの懸念や疑問、心配がぶつけられたためです。  一つは戦前の「愛国教育」の“後遺症”のためです。  時の軍部独裁政権は「忠君愛国」の名のもとに国論を統一し、「国のために命をささげる」教育を徹底しました。その結果、「一億火の玉」、無謀な戦争に突入して、この国は亡国寸前の憂き目を見ました。  さらに、時々の政治課題や経済の動き、世の中の風潮と関係ない純粋培養のような愛国心はあり得るのかという疑問もあります。  新基本法では「教育の中立」を残しながらも、わざわざ「法律の定める…

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文部科学省のDNA

「1935年 天皇機関説学者19人に圧力」という記事があった。教育基本法の「改廃」により、文科省のDNAは活動を活発化していくだろう。  【ワシントン=共同】日本で軍部ファシズムの台頭につながった一九三五年の「天皇機関説事件」をめぐり、文部省思想局(当時、以下同)が憲法学者ら十九人を「速急の処置が必要」など三段階に分類、機関説の修正に応じない場合は講義を担当させないなどの報復措置を警告し、学説の変更を強要していたことが十六日、分かった。思想局の秘密文書が米議会図書館に保管されていた。  事件から七十年余。政府が学者を個別に攻撃、転向を迫る徹底した思想統制の過程が個人名や具体例とともに判明した。  複数の専門家は、文部省による具体的な圧力の実態を記した文書が確認されたのは初めてだとしている。  文書は、米国が終戦直後に日本で接収した「各大学における憲法学説調査に関する文書」で、計約四百五十ページ。  それによると、思想局は天皇機関説排撃の気運が三五年前半に高まったことを受けて憲法学説を本格調査。機関説を支持する度合いに応じ、十九人の学者を「速急の処置が必要」「厳重な注意が必要」「注意を与えることが必要」の三段階に分類。その上で著書の改訂や絶版を求め、従わない場合は(1)著書発禁や憲法講義の担当解任(2)講義休講-などの報復措置を取ることを決定した。  (1)には機関説事件に絡んで貴族院議員を辞職する美濃部達吉・東京帝大名誉教授の弟子、宮沢俊義・同大教授らが(2…

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【社説】 東京新聞「行く先は未来か過去か」

 格調の高い社説である。的確な歴史認識と、現行教育基本法の意義、そして今回の「改正案」についての理解をふまえた主張である。ジャーナリズム宣言をしている「朝日新聞」の無内容の社説とは違う。  教育基本法が五十九年ぶりに改定された。教育は人づくり国づくりの基礎。新しい時代にふさわしい法にとされるが、確かに未来に向かっているのか、懸念がある。  安倍晋三首相が「美しい国」実現のためには教育がすべてとするように、戦後日本の復興を担ってきたのは憲法と教育基本法だった。  「民主的で文化的な国家建設」と「世界の平和と人類の福祉に貢献」を決意した憲法。  その憲法の理想の実現は「根本において教育の力にまつべきものである」とし、教育基本法の前文は「個人の尊厳を重んじ」「真理と平和を希求する人間の育成」「個性ゆたかな文化の創造をめざす」教育の普及徹底を宣言していた。 ■普遍原理からの再興  先進国中に教育基本法をもつ国はほとんどなく、法律に理念や価値を語らせるのも異例だが、何より教育勅語の存在が基本法を発案させた。  明治天皇の勅語は皇民の道徳と教育を支配した絶対的原理。日本再生には、その影響力を断ち切らなければならなかったし、敗戦による国民の精神空白を埋める必要もあった。  基本法に込められた「個人の尊厳」「真理と正義への愛」「自主的精神」には、亡国に至った狭隘(きょうあい)な国家主義、軍国主義への深甚な反省がある。より高次の人類普遍の原理からの祖国復興と教育だった…

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教育基本法の「改廃」決定ー政府は北朝鮮のような国家がお好き

「東京新聞」の記事である。 http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20061216/mng_____sei_____002.shtml 『公』『愛国心』前面に 改正教育基本法が成立  安倍内閣が今臨時国会の最重要法案と位置付けていた改正教育基本法は十五日夕の参院本会議で、自民、公明の与党の賛成多数で可決、成立した。防衛庁の省昇格関連四法は自民、公明、民主、国民新の各党などの賛成多数で成立した。民主、共産、社民、国民新の野党四党が衆院に提出した安倍内閣不信任決議案、参院に提出した伊吹文明文部科学相の問責決議案は、いずれも否決。野党四党が衆院に提出した麻生太郎外相の不信任決議案、共社両党が参院に提出した安倍首相問責決議案は採決されなかった。同日で切れる今国会の会期は十九日まで四日間延長され、閉会中審査の手続きなどが残っているものの、改正教育基本法などの成立により、今国会は法案審議を事実上終えた。  一九四七年に制定された教育基本法の改正は今回が初めて。  制定以来五十九年ぶりに全面的に改める内容になっている。  前文には、現行法が個人の権利尊重に偏っているとの指摘を受け、「個人の尊厳」と並び、新たに「公共の精神の尊重」や「伝統の継承」を明記し、公共性の重視が色濃く打ち出された。  「教育の目標」(二条)には「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と…

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【本】苅谷剛彦ほか『欲張りすぎるニッポンの教育』(講談社現代新書)

 対談と苅谷氏、対談相手の増田マリヤ氏の文章で構成されている。苅谷氏の発言や文は、現在の教育が抱える問題点をよく衝いている。増田マリヤ氏は、教育問題についての認識が深くはない。ジャーナリストとして、自らの見聞にもとづいた部分はよいけれど、そうでないところは理解力に欠ける。マスメディアに関わる人々には、表層部分を撫でるだけであたかもわかったような気になるヒトが多い。あまり勉強しないからしかたないが。  とくに前半部分は、増田氏の無理解が苅谷氏をいらだたせていたのではないかと思われる。  それはさておき内容に入る。  まず英語教育のこと。小学校に英語教育を導入して、英語を話せるようにしたいと考えている人が多いようだ。最近の英語教育は、英会話を中心にやろうとしているようだ。しかし、学校で学んだ英会話は、その授業時間のみで、他の学校生活や日常生活にはつかわれない。なぜ日本人は英語がはなせないか。それは必要性がないからだ。  失礼ながら、英語の先生は、話すことは出来るかもしれないが、知識と教養に欠けている人が多い。何を話すのかが重要なのだ。私は英会話教育なんか受けていない、ほとんど忘れかけている大学受験用の英語を頭の奥からだしてきて外国人と話すが、発音が下手でもなんとかコミュニケーションできる。政治のこと、経済のこと、文学のこと・・・・・。必要になったら、何とかしようとするし、何とかなるのである。何を削って英語を導入するのか知らないが、それよりも世界地図を子どもたちの頭の中に記憶させてほしい…

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一般教養を失った教育

 立花隆氏のメディア ソシオ ポリティックスの履修もれ問題についてのコメントは、有益である。  展開されているのは、若者たちには「教養」がなくなっているという指摘である。同感である。「ゆとり教育」で、自主的に学ぶ姿勢がついたかというと全くついていない、知識=教養もない、といったら、もうそれは「失敗」なのである。早く、教育政策を変えるべきなのである。だが、文科省は変える気はない。教育課程はそのままにして、学校に競争を強制させるとともに、子どもたちには一面的な能力だけを開花させようとしているのだろう。  立花氏は、文科省をはじめとした政府の意志を疑わないからだ。政府の意志は、若者から教養を奪う、というものだ。東大には残っているが、文科省は大学から教養課程をなくした。 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/061101_yutori/  前にも記したが、参議院議員山本一太氏がイラクの位置を知らなかったように、子どもたちには世界地理が頭に入っていない。だから、高校で世界史を必修にするといっても、おそらくイメージは湧いてこないだろう。ギリシャローマ史といっても、その位置を知らない。とにかくひどい状態だ。  こんな状態に誰がした。「ゆとり教育」とは、国民から「知」を奪うものである。全国の高校、大学で教育に従事している人々に尋ねてみればよい。ほとんど知的レベルの低下を歎いているはずだ。  だが、文科省は、現…

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これでよいのか、足立区教育委員会のやり方

 朝日新聞の記事「学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに」まったく驚いてしまった。ついにここまできたか、という驚きである。  http://www.asahi.com/life/update/1104/004.html  東京都足立区教委は、区立小中学校に配分する07年度予算で、都と区の教委がそれぞれ実施している学力テストの成績に応じて各校の予算枠に差をつける方針を固めた。小学校計72校、中学校計37校をそれぞれ4段階にランク分けし、最上位は約500万(中学)~約400万円(小学)、最下位は約200万円にする予定。都のテストで同区が低迷していることなどから、学校間競争をさらに促す必要があると判断した。  区教委によると、差をつけるのは各校の自主的な取り組みを支援する「特色づくり予算」の金額。各校の申請をもとに配分し、外国人講師や補習指導ボランティアの派遣費用などに使われている。07年度は前年度比約1億5000万円増の約4億1000万円を予定している。  ランクづけの大きな根拠は、年1回実施される都の学力テスト(小5と中2の全員が対象)と区のテスト(小2以上の全学年全員が対象)。都テストで、各校の平均正答率が、都平均と区平均以上の科目がそれぞれいくつあるか▽区テストの成績が前年度からどれだけ伸びたか――などの項目を設けて査定する。 (以下略)    なお「教材費や光熱費など学校運営の必要経費は、従来通り児童・生徒数やクラス数などの「基礎数」に応じて配分する」と…

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高校の必修科目の非履修問題

 最初に10月24日の朝日新聞記事を掲げる。 必修履修せず197人卒業ピンチ 富山・高岡南高  富山県立高岡南高校(篠田伸雅校長、高岡市戸出町)で、地理歴史教科を選択制としたため、3年生197人全員が卒業に必要な科目を履修していなかったことが24日、わかった。同校は県教委とともに卒業資格取得のための方策を協議している。  同校や県教委によると、学習指導要領では世界史、日本史、地理の3教科から2教科を選ぶことになっていて、世界史は必修となっている。しかし、同校では昨年春ごろ生徒から「受験に必要な教科だけにしたい」との声が上がり、昨年度は3教科から1教科だけの選択でも可能とするようにした。その結果、世界史を履修していないなど、3年生全員が卒業資格を取得していなかったという。  県教委は全員が卒業資格を得られるよう、冬季講習などで集中的に補習を行うことなどを検討している。篠田校長は「生徒に対し、申し訳なかった。十分説明してできるだけ負担にならないよう対応していきたい」と話している。  文部科学省によると、履修には50分の授業が70回必要で、時間数を確保できれば卒業は可能という。 http://www.asahi.com/special/061027/TKY200610240180.html  私が高校生の頃は、授業と大学受験は別物であった。つまり、大学受験は個人的な作業であったということである。大学受験そのものについては、高校から調査書を書いてもらっただけで…

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愚民化政策

 先日山本一太参議院議員が、イラクがどこにあるか、その位置を知らずにいたという報道がなされた。イラクがどこにあるのか知らないままに、イラクへの自衛隊派遣を推進する側に立っている山本氏の基礎的な教養の欠如を感じるが、最近の子どもを見ていると、まさしく山本議員のような人間を育てようとしているのではないかという気がする。基礎的教養を育てないで、国家の政策に従順な人間の育成である。  いろいろ調べてみると、最近の中高校生の地理的・歴史的な認識の欠如は凄まじい。ひょっとしたら、子どもたちの地理的認識をはじめとする社会的な認識を育てないようにしているのではないかと思ってしまう。  もちろんこれは学校の教育だけではないかもしれない。学校教育のせいにすればよいとは思わない。  例えば電車に乗ればケータイでメールをずっと見ている、あるいは送り続けている高校生の姿を見ていると、家に帰ってもこういうことをしているのではないかと思ってしまう。  今の子どもたちには、社会の中にある自分という視点がなくなってきているのかもしれない。だから社会的な事象に関心を抱かないから、よけいに社会認識が弱体化する。  いったい社会認識の欠如をどうすればよいのか。  

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地図が頭にない子どもたち

 かつてテレビで、通行中の若者に地図をひろげて、「○○国はどこにありますか」と尋ねる場面があった。頭がぼんやりしていそうな若者は、適当な場所をさして「ここっ!!」などと言っていた。  だが、頭がぼんやりしていないような普通の若者の頭に、地図が入っていない。  例えば、自衛隊が派遣されているイラクの場所なんかも、おそらく地図上のその場所を知らないだろう。  教育課程が新課程になってから、このような状態がひどくなったようだ。  少し実験をしてみたら、イラクをトルコのあたりとしたり、北京はモンゴルの北方にしたり、・・・・惨憺たる状況であった。  知らなくていのだろうか。  ある高校では、「愛知県って静岡県の東?西?」と質問する高校生もいるのだと。ここは浜松市である。  これでは、自衛隊の戦地への派遣の問題なんかも、若者には「素通り」だろう。基礎的な知識がないと、正常な社会認識も育たないと思う。    ひょっとしたら、社会認識を育てないような愚民化政策を強化しているのかもしれない。    

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浮遊する情報、乱舞する情報

 イラクがどこにあるかわからない、1945年に終わった戦争がどこと戦ったか知らない、・・・最近の子どもたちの「知らない尽くし」に困惑したある教師、白地図を渡して何度もイラクやアフガニスタン、フランスやスペイン・・・・・の位置を確認させ、ミニテストも行うが、しばらく経つともう「知らない」。白地図の種類が変わると、もう不明となる。  知らない・・・ということに恥ずかしさをもたない。知ってどうなるの・・・という具合である。  中学校の教科書を見ると、ずっとうすくなった。内容も、最低限の説明である。そのなかに太字が並ぶ。  だが、ことばというのは、あるいは語句というものは、他のそれらとの関連の中で自らの意味を明らかにしていく。と同時に、関連の中で軽重というものもでてくる。しかし「他」がないとき、ことばや語句というものは、それぞれバラバラに浮遊していくのである。  バラバラの情報が浮遊している状態、それが今だ。その情報は、学校で学ぶ情報だけではなく、テレビから、新聞・雑誌から、様々なところからもたらされる無数の情報である。それらが混然と混じり合って、まさに等価な情報として浮遊している。知らなければならない情報と、すぐにでも破棄してもよい情報が、まさに等価のものとしてあるとき、知らなければならない情報が「知らなければならない」ものと認識されることはまずないから、すべてが破棄してもよい情報と等価になってしまう。  情報というものが様々な情報と関連づけられていくとき、そこに一定の知の体系(ど…

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【本】志水宏吉『学力を育てる』(岩波新書)

 最近の学力低下問題についてきちんと分析を加え、さらにそれをどう克服するかについて具体的な事例を挙げて論じた本である。本書の構成は、以下の通り。  第一章 学力をどう捉えるか 「学力の樹」  第二章 子どもたちの学力はどうなっているか  第三章 学力の基礎はどう形づくられるかー家庭の役割  第四章 いかに基礎学力を保障するかー学校の役割  第五章 「学力の樹」をどう育てるかー地域の役割  エピローグ  構成が良い。問題意識を持ち、それを解決すべき課題としてとりあげ、それらをどのように克服したらよいか、の順に記されているため、わかりやすくまた理解しやすい。  内容を詳細にとりあげることはしないが、第三章の「家庭の役割」が印象深い内容であった。「家庭の教育環境」の重要性と具体的なありかたが記されている。これを、子どもを持つ親が読んでくれれば、子どもの知的発達が期待されよう。  さらにこの本のよいところは、家庭環境に「難」があっても、「効果のある学校」の力によって、それを克服可能とする展望を示していることである。  小中学校の先生たちがこの本を読んで実践すれば、学校は「効果のある学校」となり、教育は少しでもよくなるのではないかと思った。   現代の政治社会の低迷の背景に、知的衰弱をみる私にとって、未来を担う子どもたちの状況は他人事ではない。

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早寝早起き運動

 文科省が来年度から「早寝早起き運動」を展開するという記事があった。 子どもの生活リズム 向上大作戦!! 『早寝、早起き、朝ご飯』を  「早寝、早起き。朝ご飯を食べよう」を合言葉に、文部科学省は来年度から、子どもの生活リズムを向上させるための全国的な事業を展開する方針を決めた。民間団体や経済界にも広く協力を求め、国民運動として盛り上げたい考えだが、個人のライフスタイルに踏み込む話だけに、浸透には疑問符も。二十四時間営業のコンビニを重宝し、夜遅くまで塾に通うなど「夜型」傾向が強まる子どもの生活習慣を改善できるのか。担当者は「少しでも流れを変えたい」と意気込んでいる。  (以下略) http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20051102/eve_____sei_____000.shtml  行政は、こういう私的なことに口を出すべきではないことは重々わかっているが、しかし、今の子どもたちの状況をみると、そのような取り組みも必要ではないかと考えてしまう。どれほど効果があるかは疑問ではあるが、成長期の子どもの夜更かしや睡眠不足が「悪」であることを子どもや大人たちに知らせていくことは大事であると思う。  「百ます計算」で有名な陰山英男氏は、「日本の子どもたちの学力低下の原因は、睡眠不足を中心とした生活の乱れ」(『中日』2005・11・15夕刊)とにらんでいるという。  最近コンビニは24時間営業、スーパーもそれに続き、またイトーヨーカドーなども23時…

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強制連行

 昨日は、某テレビ局に協力して、磐田郡龍山村と榛原郡中川根村に行った。  龍山村には、日本鉱業峰之沢鉱山がある。銅鉱山であるが、すでに廃鉱になっている。戦時中には、朝鮮人、中国人を強制連行し、ここで労働を強制した。  私は、この鉱山に連行された朝鮮人、中国人の生き残りの人に会いに現地へ行って取材したことがある。朝鮮人(現在・釜山市に住む)は、日本人の警察官と役所の人間が、「徴用」するといわれやむなく日本に来た、拒否なんかできる状態でなかった、と証言した。日本人の暴力には驚くと共に怒りを覚えた、という。  中国人は、現在唐山市近郊の農村(といっても、すごく遠い)に住む。早朝農作業に行く途中に日本軍兵士に拉致される。そして塘沽の収容所に入れられ、1945年1月に日本に来た。197人で来たが、そのうち81人が死亡。日本に着いたときには、労働できるような体ではなかった。長期の収容所の生活(食糧も水もほとんど与えられない)で、体全体が衰弱していたからであった。  戦後中国に帰ることができたが、カネがないので歩いて帰ったという。  中川根村には、久野脇発電所(当時は、国策会社の日本発送電、現在は中部電力の所有)がある。1940年から1944年までの間に建設された。まったくの戦時下である。日本人青壮年のほとんどは兵役についているため、多くの朝鮮人を動員して短期間のうちに建設した。発電に使用する水は、上流の大井川発電所で使用された水をその直下から導水管で久野脇発電所まで導いてくるのである。その導水管…

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戦争の記憶を記録にとること

 戦争体験者が高齢化している。敗戦60年目の今年、私はあることを考えている。それは戦争体験者の聞き取りをビデオで記録していくことだ。  10年ほど前か、もう忘れてしまったが、沖縄のひめゆり資料館で、ひめゆり部隊に属していた人々が、沖縄戦における自らの体験を詳細に証言しているビデオを見た。そのビデオは、入館者が求めないと見せてくれないので、もっと人々の眼に触れるようにしたほうがよいと『沖縄タイムス』に投稿したことがある。そのとき、このような作業、つまり戦争体験者のビデオによる記録は必要だと思った。  最近ふとまわりを見渡すと、戦争体験者が次々と他界していく。あるいは、くも膜下出血などの病気で、話すことができなくなっている。これは大変だ、と思うようになった。  そこで、この数日で、ビデオカメラと、DVDのドライヴを購入した。時間にゆとりができたら、戦争体験者から話を聞き、それをDVDにして保存しようと決意したのだ。  戦争体験の多くは、活字で残されている。しかし、活字だけではもう時代遅れかもしれない。映像による記録、それも映画会社が作製したのではなく、身近な地域の老人たちが語る証言のほうがインパクトは大きいだろうと思う。  私はそれを平和教育に役立てて貰おうと思っている。どうだろうか、“映像による戦争体験”作製ネットワークをつくるというのは。  戦争体験者は、体験を振り返って、どのような考えの人でも、「ああいう戦争は二度としてはいけない」という。それを記録し、蓄積していくのだ。    

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石浦章一『東大教授の通信簿』

石浦章一『東大教授の通信簿』(平凡社新書)を読んだ。なかなか面白かった。  「知」ということばがあちこちで使用されている(たとえば「知の遠近法」、「知の最前線」とか)とき、実際は人々が「知」から次々と離れつつある。一般の人々も、あるいは学生も、本を読まなくなっている。逆に「知」に関心を抱く少数の市民や学生は、かなりの本を読む。その乖離が甚だしい。  そのような知的状況が、現在の停滞する政治社会をつくり出しているのではないかと私は訝っている。  本を読んだり、勉強しない学生、一昔前ならほっておいても学生は勉強した。今はそうではない。だから授業も工夫しながら、学生の知的レベルを上げていかなければならないのである。大学でも「授業改善」に取り組んでいる。名古屋大学が進んでいるようだ。名古屋大学のHPには、授業改善のための詳細な取り組みが載せられている。  本書は、東大教養学部でも学生による授業評価を行っていること、それについての報告である。授業実践→評価→改善のサイクルをきちんと構築することが必要だ、というのである。人に話をするとき(授業、講義とか講演)に必要なノウハウが各所に記され、参考になる。  

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