5月3日 中日新聞社説

 憲法記念日の社説、最近は全国紙の質がどんどん落ちている。ブロック紙や県紙に秀逸のものが書かれる。全国紙の筆力や理念の劣化が顕著である。  「中日(東京)新聞」、今日の社説は秀逸である。   憲法記念日に考える 初心をいまに生かす2010年5月3日  長い戦争から解放され、人々は新しい憲法を歓迎しました。その“初心”実現に向けて積極的理念を世界に発信できるか、日本の英知が試されます。  米軍普天間飛行場の移設問題が迷走し、憲法改正国民投票法の施行が十八日に迫る中で今年も憲法記念日を迎えました。この状況は非武装平和宣言の第九条をとりわけ強く意識させます。  日本国憲法の公布は一九四六年十一月三日、施行は翌年五月三日でした。当時の新聞には「日本の夜明け」「新しい日本の出発」「新日本建設の礎石」「平和新生へ道開く」など新憲法誕生を祝う見出しが並んでいます。  新しい歴史を刻む息吹  長かった戦争のトンネルからやっと抜け出せた人々の、新たな歴史を刻もうとする息吹が紙面から伝わってきます。新生日本の初心表明ともいえるでしょう。  あれから六十年余、日本は武力行使により一人も殺すことなく、殺されることもなく過ごしてきました。憲法の力が働いていることは明らかです。  しかし、現代日本人、特に本土に住む人たちの胸には先人の思いがどれほどとどまっているのでしょう。少なくとも国内は平和で、戦争を体験した世代も少なくなり、憲法の効果を日常的に意識することはありません。憲法…

続きを読む

6月3日の「東京新聞」社説  憲法問題

東京新聞社説  「週のはじめに考える 50年前の憲法論争」 2007年6月3日 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007060302021181.html  「戦後レジーム」は戦前の体験に学んで築かれました。教訓を忘れないよう、歩んできた道を振り返りながら未来を見つめ、憲法と向き合いたいものです。  一九九〇年、天皇は即位を国内外に披露する「即位礼正殿の儀」のお言葉で、「日本国憲法を順守し、日本国及び日本国民統合の象徴としての務めを果たす」と誓われました。憲法第九九条で公務員に憲法の擁護尊重義務が課されていることに配慮されたのでしょう。  「米軍基地の中の村」と言われた沖縄県読谷村の村長を二十三年も務めた山内徳信さんは、この条文を大きな掛け軸にして村長室に飾っていました。 自分の権力基盤を否定  今年の憲法記念日、安倍晋三首相の談話は「戦後レジーム(体制)を原点にさかのぼって大胆に見直し、憲法について議論を深めることは新時代を切り開く精神につながる」と改憲へ強い意欲を示しました。  首相の権力は憲法によって与えられています。自分の権力基盤を否定するのは矛盾のようですが、よく似たことが五十年前にもありました。安倍首相が敬愛する祖父の故岸信介らが、新憲法制定を目指して内閣に憲法調査会を設置した時です。  岸は当時の自民党幹事長、後の首相です。戦前は中国大陸で植民地経営に重要な役割を演じ、東…

続きを読む

国民投票法案に対する「中日新聞」の社説

国民投票法 ぎらつく「改憲ありき」 2007年5月15日  十八件もの付帯決議の多さが、うさんくささを物語ってはいまいか。改憲の手続きを定める国民投票法が与党多数の状況下で成立した。「国民の権利確立」と言うには、精緻(せいち)な詰めをなお残す。  「与党の責任を果たした」「与党の成果だ」と、参院本会議での可決・成立後、安倍晋三首相ら政府・与党の首脳が口をそろえている。  もとより改憲の発議には、衆参各議院総員の三分の二以上の賛同を要する。常識的には与党だけでの発議など困難なことを、わかったうえでのことだろう。  首相らがあえて「与党」を力説するところには、目先の参院選へ政権の「実績」をアピールする思惑が露骨である。改憲、護憲いずれの立場の人であろうとも、憲法に関連する法がそのように扱われることに疑問なしとしないのではなかろうか。  本来ならば党派を超え、静かな環境で丁寧に時間をかけて細部を詰めるべき手続き法であった。さらに言うなら、憲法論議と並行して手続き法を定めてもけっして遅くはなかったのである。そうした私たちの考えは法が成立した今も変わらない。  衆院の採決強行に続いて、参院の審議も多くの問題を提起した。それが採決にあたっての十八件の付帯決議に表れている。  たとえば決議は最低投票率の是非を検討するとした。衆参両院に憲法調査会が設置された二〇〇〇年以来の議論の最後になって、有権者総数のうちのわずかな賛成だけで改憲がなされかねない、との疑念が内外から強…

続きを読む

改憲に反対!

 「改憲」への道をひたすら準備する安倍政権。「戦後レジームからの脱却」というのが、その一つの理由らしい。占領下に占領軍によってつくられた憲法だから・・・・という。だがこの理由はすでに破綻している。  しかしそれでも言い続けるなら、占領下に行われたたくさんの改革をきちんと総括すべきであろう。  自衛隊の前身である警察予備隊も占領軍命令ではなかったか。  また農地改革もおこなわれたが、あれも占領軍の力がなければできなかった。ならば、農地改革も白紙に戻してもらいたい。私の先祖は、農地改革でたくさんの農地を取り上げられた。返してもらいたい!!  いったいどうして現在の憲法を変えたいのか、国民の立場からはまったくわからない。政治家や財界が、とにかく変えたいと叫んでいる。  今までの流れから考えると、日本国家は米軍と共に軍事活動をしたくてたまらないようなのだ。そのために変えようというのだ。  私は現憲法を変更すべきではないと思っている。それについては、今までも書いてきた。今日、「国民投票法案」が参議院を通過したが、そう簡単に改憲できるわけではない。私は多くの人々に現憲法の意義をひろめていくことを考えたいと思う。

続きを読む

中日新聞の憲法に関わる社説

 「中日新聞」の5月1日からの社説です。食事時、SBSテレビを見ていたら、陸上自衛隊富士駐屯地にレポーターが入っていって、「かっこいい!」といったり、戦車に乗ってはしゃいでいた。SBSテレビの政治的立場がよくわかる。少なくとも憲法記念日くらいは、もう少し問題提起的な内容にすればよいのに、と思った。ないものねだりか? 憲法60年に考える(上) イラク戦争が語るもの 2007年5月1日  憲法施行から六十年。人間なら還暦です。改憲の動きが加速する一方、イラク戦争を機に九条が再評価されています。まだまだ元気でいてもらわねばと願います。  憲法解釈上禁じられている集団的自衛権行使の事例研究を進める有識者懇談会の設置が決まりました。  歴代内閣が踏襲してきた憲法解釈を見直すお墨付きを得る。日米同盟強化に向け、集団的自衛権行使の道を開くことに狙いがあるのは、メンバーの顔ぶれからも明らかです。  憲法には手を触れず、日米軍事一体化への障害を解釈で切り抜ける。安倍晋三首相からブッシュ政権への格好の訪米土産になったようです。 キーワードは国際貢献  言うまでもなく九条の背骨は「戦争の放棄、戦力の不保持」です。その解釈の変遷史でも最大の転機は一九九一年の湾岸戦争でした。キーワードは国際貢献です。  戦費など百三十億ドルを拠出しながら小切手外交と揶揄(やゆ)され、国際社会への人的貢献を迫られたのです。一国平和主義、一国繁栄主義への批判がわき起こったのでした。  自衛隊…

続きを読む

イラク撤退法案可決と日本

 米英によりイラク侵攻は、すでに正当性がまったくなかったことが証明されている。大量破壊兵器はなかったし、フセイン政権はアルカイダと一線を画していたし、「民主的政府」の樹立とは逆に激しい混乱を引き起こし内乱状態をつくりだした。正当性がないどころか、イラクを破壊し、イラク国民を殺戮ににいったようなものだ。アメリカ兵の死傷者も無視できない数になっている。  だから、アメリカでは「イラク撤退法案」が可決された。 イラク撤退法案可決   米下院 大統領は拒否権行使へ  【ワシントン=久留信一】米下院本会議は二十三日、二〇〇八年八月までに駐留米軍の戦闘部隊を撤退させることを定めたイラク戦費関連の〇七年度補正予算を賛成多数で可決した。ただ、ブッシュ米大統領は同日、拒否権行使の方針をあらためて表明しており、法案成立の可能性はほとんどない。  採決結果は、賛成二一八に対して反対二一二。「イラク戦費を承認すべきではない」とする民主党の一部議員グループが反対に回ったため、過半数ぎりぎりでの可決という際どい結果となった。  法案可決後に記者会見したペロシ下院議長(民主党)は「議会の投票は、戦争終結に向けた大きな一歩だ」と強調。今後は上院の審議を待って法案一本化作業を進める方針を示した。  一方、ブッシュ大統領はホワイトハウスで声明を発表、「現場の状況をわきまえない独断的な撤退日程を設定した」と指摘。「法案が私のデスクに届いても、拒否権を行使する」と法案審議を主導した民主党を批判した。http://www.…

続きを読む

城山三郎のこと

 城山三郎が亡くなった記事が、今日の『中日新聞』夕刊にあった。その主旨を、以下に紹介しよう。  城山さんは、戦争末期、あと数ヶ月戦争が長引けば「伏龍特攻隊」の一員として、死ぬはずであった。「伏龍特攻隊」とは、「海底に沈む兵士が、竹竿に装着した爆雷を敵の舟艇に突き上げて自爆する」部隊である。何とも悲惨な、死ぬことだけを目的とした部隊である。予科練生の乗る飛行機がなくなることから、余剰人員を「活用」するためのものだったという。  城山さんは、『指揮官たちの特攻』を書くために取材して、特攻を考えつき、命じた奴は「修羅」だ、と語ったという。  特攻の死は、「強制された死」であった。  城山さんは、次のように語ったそうだ。  日本が戦争で得たのは、憲法だけだ。    この言葉が、今とても重い。

続きを読む

憲法に手をつけるな

 日本は敗戦を「終戦」とした。戦争に敗れたことを直視せず、戦争が「終わった」ということにして、あたかも台風が過ぎ去ったかのように、戦争もどこからかやってきて、そして「過ぎ去った」ものとして扱った。その後60年以上、日本は戦争を直接経験しないで過ごしてきた。それはよいことだ。  だが、私たちは忘れてはならない。  「大日本帝国」は朝鮮に対しては、「内鮮一体」を唱え、朝鮮の人々には「皇国臣民の誓詞」を強い、「日鮮同祖論」まで登場していた。だがどうだ、戦争が終われば、「内鮮一体」は日本国内から一瞬にして消え、朝鮮半島がどうなろうと日本人はほとんど意に介さなかった。南北分断、朝鮮戦争、独裁政権による過酷な支配など、朝鮮の人々は、平和で豊かな「戦後日本」の隣で苦難の日々を過ごしていた。   また「大東亜共栄圏」とされたアジア諸国で、平和で豊かな「戦後日本」と同じような、いや少なくとも平和であったところはあっただろうか。「戦後日本」は、「大東亜共栄圏」を唱えたことすら忘れてしまっていた。  そんな「戦後日本」ではあったが、日本が「大東亜共栄圏」を振りかざして二度と再び軍隊を送り込んでこない保障が整ったことに、アジア諸国は「安心」したのだ。その保障とは、日本国憲法である。  日本国憲法の平和主義は、「戦後日本」が忘れ去ろうとした植民地支配や侵略、占領支配を繰り返さないシンボルなのだ。そのシンボルをなくそうという人々が、そのための準備法案をつくろうとしている。改憲準備法とも言うべき、「国…

続きを読む

雑誌『すばる』8月号

 『すばる』8月号は、面白い。まず井上ひさしの「夢の痂(かさぶた)」がある。井上ひさしの戯曲は読んでいるだけでも面白い。そのなかに一定の思想、さらに現実的課題とも直結しているからだ。戦争直後の東北の社会を舞台に、「主語」をテーマにする。「自分が主語」になること、天皇から庶民まで、「自分が主語」になることを主唱する。与えられた「状況」のなかに「主語」を隠すのでは、いけない、というのだ。そして責任をとるべき者はとる、ということが唱えられる。  中沢新一と太田光の対談「憲法九条を世界遺産に」も面白い。中沢ではなく、太田の主張に憲法九条の意味が新たに捉え直されている。  加賀乙彦と亀山郁夫の対談「二つのドストエフスキーの間に」もよい。私はドストエフスキーの作品ほとんどを学生時代に読んだが、ドストエフスキーは様々な精神的触発をもたらす。読み方も、いろいろだが、ここでは宗教性について論じられる。  最近はドストエフスキーを読む機会がないが、時間があれば再び挑戦してみたいと思う。  なお、「追悼米原万里」もよい。米原万里は闘病生活の後に亡くなった。まだ死ぬ年齢ではない。もったいないひとが亡くなった。

続きを読む

【本】長谷部恭雄『憲法とは何か』(岩波新書)

 静かな内容の本である。憲法「改正」の問題が俎上にあがり、熱い議論がある一方で、本書は静かなのである。静かななかに、しかし一定の主張をもつ。  硬性憲法の意義、首相公選論の危うさ、憲法改正国民投票法案の問題点などを論じ、基本的には憲法「改正」について総体として否定的な意見を開陳している。ある種原理的な議論を呈示することによって、憲法問題について冷静な議論をさせようとしているのかもしれない。  政府の9条に関する改憲案は、基本的にはアメリカと共同作戦を展開することができるように、憲法原理を変更しようという意図のもとに出されてきているものだ。そうした憲法原理の改訂がよいのかどうかが問われている。  果たして日本国家が自衛隊についてきちんと指揮権をもっているのかどうか。現在行われている安保防衛策は、自衛隊のみならず日本国家を、米国に対してより従属的な方向にもっていくものである。そういう動きに拒否反応を示していることは確かである。

続きを読む

5月3日の新聞社説

 5月3日、憲法記念日。いったいどのような社説が書かれたのか、いくつかの新聞社を覗いてみた。  まず、「ジャーナリスト宣言」を出している「朝日」。何度も記すように、昨年の総選挙の際のあまりに情念的な社説(9/11)に、私はジャーナリズムとしての「朝日」の“死”を通告したのだが、「・・・宣言」をだしたあともこの傾向はなくなっていない。まず9/11の社説の一部を掲載する。 それにしても、小泉首相はこれまで見たこともない型の指導者だ。「郵便局は公務員でなければできないのか」「民間にできることは民間に」。単純だが響きのいいフレーズの繰り返しは、音楽のように、聴く人の気分を高揚させる。  さて昨日の社説である。  今月号の『月刊現代』に「朝日新聞はどこまで堕ちるのか」という座談会が掲載されている。参加者は朝日の現役記者とのこと。そこに「例えば、役所がある政策を発表したとします。それを下敷きにして「なるほどそうである、しかしこの視点が欠けている。それが欠けたままの政策はいかがなものか」とやるわけです。、これが、特に社説に多い」という発言がある。昨日の社説もその通りの内容であった。基本的に賛同しつつ、自らの思いつきの問題点を指摘する。「米軍再編、最終合意 軍事が突出する危うさ」と題する社説である。 全国の米軍基地のうち4分の3を引き受けている沖縄の荷が軽くなる。その見通しが開けてきたことは評価したい。ただし、新たな負担が山のように並んでいる。  この調子である。また同じパターンを紹…

続きを読む

アメリカ型社会への伸展と改憲

 教育基本法の「改正」、改憲への動きは、アメリカ型社会への伸展と共に強化されている。この両者が手を携えていることをしっかりと知っておく必要があろう。  今日の『中日新聞』にロナルド・ドーア氏が興味深い数値をあげている(「日本企業」は今いずこ)。  約500万人が働いている資本金10億円以上の大企業に限ると、    1980年代の4年間に      売り上げは 37㌫増えた。      株主への配当も、34㌫上昇した。      従業員の給与も、27㌫上昇した。   ところが、2001年度~2004年度で見ると、      売り上げは、5㌫増えた。      株主への配当は、72㌫上昇した。      従業員の給与は、6㌫減った。    なお、株主(外国人投資家の株所有は24㌫)への配当金の三分の一は外  国へ支払われた。    また、従業員は給与が減ったが、役員の賞与と給与の合計は、その4年間  で45㌫上昇した。     このように、アメリカ型社会への伸展が着実に進行している。   その一方で、「愛国心」が強調され、日本国家への統合が強引な手法で図  られてきている。その延長線上に「改憲」がある。   果たして、それで良いのか?!    

続きを読む

【本】愛敬浩二『改憲問題』(ちくま新書)

 よい本だ。きわめて説得的で、一気に読んでしまった。従来の憲法論の成果を十分に生かしながら、なぜ改憲すべきではないかを丁寧に論証する。  改憲派の口調が、「現実主義」を強調しながら、逆に現実をまったく顧慮せずに主張されているものであることなどが指摘される。  “それは「神学論争」だ”などといって、議論を避け、権力をもった勢力が、自らの意志を現実化していく。国家機構あるいはその担い手に対する規範は次々とやぶられ、逆に庶民に対する規範というか統制は強化される。  改憲論議、といっても自民党などのそれであるが、今まで古今東西の人々が、着実に積み重ねてきた立憲主義、権利拡充、戦争違法化等々の流れをいとも簡単に捨て去ろうとする、その姿勢に、私は本当に唖然(慄然)とする。  とにかく、改憲派の主眼は「自衛隊を「正真正銘の軍隊」にしたうえで、海外での軍事行動を可能にすること」(97頁)であり、さらには「憲法を「国家を縛るルール」から、「国民支配の道具」へと変えること」(216頁)である。  憲法の内容と現実がまったく乖離している状況を何とかしないといけないなどと、改憲の方向に人々を連行しようとする動向がある。それに安易に乗りかかるとどうなるか、そういう想像力をもたなければならないだろう。  現在の先制攻撃論をもった米国などと海外で軍事行動するとどうなるか、税金はどうなるか、その時人々の自由や権利はどうなるか・・・・・憲法を「改正」した場合の、「その後」に思いを馳せようではないか。憲法…

続きを読む

【本】古関彰一『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット)

 この本もすばらしい。この本も、というのは、古関氏の『新憲法の誕生』を読んだとき、これは“名著”だ!と思った経験があること、そして『「平和国家」日本の再検討』(岩波書店)を読んだときにも、日本国憲法の平和の理念を現代に生きるものとして練り直して提出されたものと感動した経験があるからである。    今回の本は、ブックレットという性格であるが故に、ですます調でわかりやすく、また平和主義の理念を現代に、さらに未来に生かしていこうという熱い思いをもって記されている。改憲に反対している人はもちろん、改憲すべきであると考えている人にこそ、ぜひ読んでいただきたいと思う。  誰が、なぜ、どのようにして憲法9条を、日本国憲法に入れたのかが実証的に、わかりやすく書かれている。そのキーとなることばは、天皇(の戦争責任)、沖縄の米軍基地である。   「憲法九条は、単に日本が戦争をしないというだけではなく、日本が二度と戦争しないことを連合国、あるいはアジアの戦争被害国にたいして誓った誓約書でもあるのです。憲法九条を持ったことによって天皇制を残したまま戦後の国際社会に復帰することができたのです。日本国憲法の平和主義は、戦後世界で日本が生きていくためのパスポートであったことをあらためて確認する必要があります」(47頁)。      古関氏は、自民党の「新憲法草案」をアメリカ人の学者に送ったら、彼から「自民党案ではアジアが爆発しますよ」と返事がきたという。  これから日本は、経済的にも、政治的にも、アジ…

続きを読む

憲法 その10 (日本国憲法を未来に伝えること)

10.平和憲法を生かし未来に伝えましょう!  日本の平和憲法は、20世紀初頭からはじめられた戦争違法化(戦争することはいけないこと)の動きの最先端にあるのです。そこには、戦争で犠牲になった人々の平和への意思がいっぱい詰まっているはずです。 戦争の本質は、どのような理由で行われようと、殺戮と破壊です。戦争も武力の行使・威嚇もしない、戦力をもたない、交戦権を認めないという日本国憲法は、世界の憲法の模範です。  現在、世界で最も豊かな6%の人々が世界中の富の59%を所有し、20%の最富裕層が世界の総資産とエネルギー消費の80%を独占しているといいます。また一日1ドル以下の生活をしている人々が12億人いるといいます。  現在の「テロの脅威」といわれる事態は、このような拡大する経済格差が背景になっています。「テロの脅威」をなくしていくためには、この経済格差を縮小していくこと、貧困をなくしていくこと、それが遠回りのようでいて最も近道なのです。  日本国憲法はその前文で、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」としています。  今、憲法前文の精神を担って、日本のNGOが世界で様々な人道支援活動を行っています。戦闘が行われている地域であっても、彼らを守っているのは平和憲法だといいます。平和憲法をもつからこそ、私たち日本人は、人道的な国際貢献ができるのです。  平和憲法を生かし、未来に伝えましょう!

続きを読む

憲法 その9 (改憲されたらどうなる?)

9.改憲されたらどうなるの?  改憲の目的が、世界各地で展開するアメリカや日本など先進国の大企業の「金儲け」を保障する(グローバルな市場秩序維持)ために、アメリカやイギリスなどと一緒に軍事行動をすることですから、改憲されたら自衛隊(その場合自衛隊とは呼ばれなくなるでしょう)は海外に派遣され、軍事作戦に従事することになります。  今までは戦闘が行われる地域を避けてきました。しかし、改憲後は戦闘に加わりますから、殺したり殺されたり、という事態は避けられません。  また軍事行動のための経費がかかりますから、国防費(軍事費)は大幅に伸びるでしょう。そうなると、現在でさえ日本政府は莫大な借金を抱えているわけですから、軍事費を捻出するために増税、社会保障の縮小が行われることになります。  国内の軍需生産も盛んになり、軍需産業が大きな力を持つようになるでしょう。武器輸出も行われます。  今でさえ、テレビ・新聞の報道に批判的視点が欠如しているわけですから、自衛隊が軍事作戦に投入されれば、アジア太平洋戦争中のように好戦的な報道が席捲することでしょう。  学校では「国防教育」が行われ、社会的にはテロ対策といって厳しい監視が行われるようになります。  今、その予行演習が開始されはじめています。

続きを読む

憲法 その8 (国防の責務)

8.「国防の責務」を入れようとしているのですか?  教育基本法という法律があります。平和憲法を公布した後、教育のなかで、個人の尊厳を基本とし、真理と平和を希求する人間を育成することを謳った教育基本法がつくられました(1947年)。民主的で平和的な日本を創り出すために、次代を担う子どもたちへの期待感に満ちた内容の法律です。  現在政府はじめ、自民党などは憲法だけではなく、この法律までも葬り去ろうとしています。   2003年に出された中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」を読むと、ここでも「公共」=国家に主体的に参加する意識や態度の育成、あるいは日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心などが記されています。日本の伝統とは、奉公や犠牲の精神だとされていますから、要するに学校では愛国心、奉公などが教えられ、そういう教育で育てられた「日本国民」を、「国防の責務」という憲法で縛ってアメリカとの軍事作戦に動員しようというのです。  実際、自民党の「新憲法起草委員会要綱」では、「国家の独立と国民の安全は、国の責務であると同時に、国民の不断の努力により保持されなければならない」となっています。 この先には徴兵制も視野に入っているのではないかと思われます。

続きを読む

憲法 その7(平和主義の他のものも改憲しようという動きがある)

7.改憲の目的は、平和主義だけですか?  改憲をめざしている人々が、とにかく変えたいと考えているのは、憲法第9条第2項です。これこそ、平和憲法といわれる理由そのものだからです。  改憲しようという人々がねらっているのは、しかしそれだけではありません。基本的人権についても、その原理を変えようとしています。それを列挙すれば、以下のようになります。  一つは、今まで個人の自由や権利を優先しすぎたという考えから、それを制約しようという方向性が見られます。容易に自由・権利を制限できるようにしたいという姿勢です。  他方で、義務や責任を国民に課していこうという傾向もあります。その中には、「国防の責務」もあります。  もう一つは、家族の強調です。具体的には、個人を基本的な単位とするのではなく、家族を基本とすること、そして家族相互の養育義務や扶養義務などの家族関係の規律を入れること、です。憲法24条には、個人の尊厳と男女の平等が謳われていますが、それが気にくわないようです。  さらに、政教分離の緩和です。その場合対象とされている宗教は、神道です。神道の行事に関しては、緩やかにしていこうという方向性が出てきています。  いずれにしても、憲法を、国家ではなく国民が守るべき法律・規則の集大成にしようという姿勢があります。本来憲法というのは、政府など公的権力を規制し、人々の自由・権利を守るためのものですから、考え方がまったく逆転しています。時代錯誤もはなはだしいと言わざるをえません。

続きを読む

憲法 その6(経済界は改憲に賛成。なぜ?)

6.なんで経済界も、改憲に賛成なのですか?  すでに日本の三つの経済団体(経済同友会、日本商工会議所、日本経済団体連合会)が、それぞれ改憲をすすめる提言をまとめています。基本的には、グローバルな市場展開のなかで海外に進出していった日本企業の権益をどう守るか、というところが出発点となっています。 経済同友会の意見書をまとめた高坂節三は「グローバル化とは、日本の資本や人材が世界中に広がっていくこと。これを守るためには何らかの方策が必要だ。だから米国と提携するのだが、ここだけは自分がやる、というところがないといざというときも言いたいことが言えない」(『朝日新聞』2003/5/27付)と語っていますが、これが彼らの改憲への衝動なのでしょう。  そのためには、アメリカの軍事行動を支持し、軍事的な支援を行うこと(集団的自衛権の行使)、あるときには単独でも軍事行動ができるように自衛隊の行動を束縛しないようにすること(軍隊としての公認)、軍事的な「国際貢献」ができるようにすること、そして武器輸出を可能とすることなど、これらが求められているのです。   今まで、日本の大企業は世界各地で手を汚さずに利益をあげてきました。  アメリカは、アメリカ企業の権益を守るため、民主的な政権を倒壊させたり、虐殺に手を貸したり、戦争を起こしてきました。そのため世界中から恨みをかっています。そのアメリカが、日本は手を汚さずに「カネだけ出す」と非難し、日本も少しは手を汚せ、と言ってきています。  日本の経済界は、その要…

続きを読む

憲法その5(アメリカという国は?)

5.アメリカってどういう国なの?  日本政府が外交方針の最初に掲げているのは、日米同盟です。おかしな事に、改憲を主張している人々は、アメリカに押しつけられたから改憲したいといい、もう一方では改憲してそのアメリカと軍事同盟を強化したいと言っているのです。改憲のためなら、合理的な理由など、どうでもよいと言わんばかりです。  さてそのアメリカですが、アメリカは、国際司法裁判所に「テロ国家」であると認定された唯一の国です。1980年、中米のニカラグアではソモサ独裁政権を倒してサンディニスタ政権が成立しましたが、アメリカは同政権を倒すためにコントラという反政府武装勢力を組織しました。コントラは、学校や診療所を焼き払い、住民を虐殺しました。それに対して、国際司法裁判所はアメリカに国際テロ犯罪をやめることと、賠償金の支払いを命じたのです。しかしアメリカはそれを拒否、さらにコントラ支援を強化したのです。 アメリカは、今までも自国のビッグビジネスの権益を維持拡大するために、それに協力的ならば独裁政権であろうと何であろうと支援してきました。逆にニカラグアのように民主的な政権ができると、それをつぶしてきました(他にも1973年のチリのクーデターなど)。 今度のイラク戦争も、アメリカのイラク攻撃に何の正当性もありません。明らかに国連憲章に違反する行動です。アナン国連事務総長もアメリカの行動を非難しています。  日本政府は、そんなアメリカと軍事同盟を結び、改憲した後には集団的自衛権の行使だとしてアメリ…

続きを読む

憲法 その4 (何で憲法を変えようとしているの?)

4.何で憲法を変えようとしているの?  日本政府や改憲を主張している人は、こう言います。①日本を守るためには日本の軍隊が必要だ、②憲法の平和主義と現実がこんなにも食い違っているのだから現実にあわせていくべきだ、③北朝鮮などが日本に攻めて来るかもしれないから軍備が必要だ、④国際貢献していくには憲法の平和主義はなくしたほうがいい、などなど。  確かに②で言うように、憲法の平和主義と現実との隔たりは大きくなっています。でも、そうであるから改憲するっていうなら、変えなければならない条文は多いですよ。例えば生存権(25条)なんかも、現実にあわそうとすれば、なくす方向にいくことになります。憲法は規範です。規範が守られなければ規範を変えていくのでしょうか。交通違反が増えると、交通規則を違反しても良いように変えていくのですか?おかしな論理です。  ①と③については、政府はすでに「自国に対して武力攻撃が加えられた場合に、国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない」というのですから、あえて改めなくてもよいわけです。 また、④については、軍事的な国際貢献を考えているのでしょうか。 日本政府は、日米安保体制の維持・強化を外交政策の基本にすえています。自民党の憲法調査会では、自衛軍の保持、集団的自衛権の行使、集団的安全保障における軍事的制裁措置への参加、などをうたっています。政府は、自衛のための武力の保持は現行憲法でも可能としているのですから、①と③は理由にならず、したがって集団的自衛権の行使…

続きを読む

憲法 その3(日本国憲法って、押しつけられたの?)

3. 日本国憲法って「押しつけられた」の?  日本は1945年8月、あしかけ15年に及ぶ戦争を敗戦というかたちで迎えました。その際、連合国から示されたのが「ポツダム宣言」です。そこには、日本は民主的かつ非軍事的な国家にならなければならない、と記されていました。そうなると、大日本帝国憲法ではいけないことになります。天皇が主権者であり、人権も天皇から恩恵として与えられた「臣民の権利」で、それも法律でいかようにも制限できるというように、非民主的・軍事的なものだったからです。そこで日本政府は、憲法草案をつくりました(「松本草案」といいます)。でもそれは大日本帝国憲法の字句をちょっと変えただけのものでした。  アメリカ占領軍の担当者は、約束を守らない日本政府の怠慢に驚きながら、日本国内でつくられた憲法草案(たとえば憲法研究会案)、他国の憲法などを参考にして、また日本の状況を考慮しながら、憲法草案をつくりあげました。それが日本政府に示されました。   この憲法草案を検討した衆議院の小委員会では、「押しつけ」などと抗議することもなく憲法原案を作成し、そのなかで占領軍の案にはなかった生存権規定を追加したりもしました。  そして占領軍の司令官マッカーサーは、日本政府に対して、憲法施行後一年間のうちに日本人民が憲法改正を必要とするなら国民投票をしてもよい、と伝えました。しかし1949年4月、時の首相・吉田茂は「政府は憲法改正の意思は持っていない」と国会で答弁したのです。  「押しつけ」論は、このように成…

続きを読む

憲法 その2(日本国憲法は、戦争違法化の最先端)

 立花隆氏も、憲法の議論を始めています。 http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050509_kenpo/index1.html 自民党改憲案では、具体的には、「国防の責務」とか、「家族等を保護する責務」(家庭を良好に維持する、子どもを養育する、親を敬う)などを書きこむべきだとしていた。しかし、おばちゃんたちにいわせれば、後者は「なんや昔の修身の教科書みたいなこと」を憲法に入れようとしているようで、憲法とは、そういうものまで入れるものなのか? という疑問を持った。その点、どう考えればいいのか、憲法ってそもそも何なの?というのが最初の質問だった。 これはもちろん、「憲法とは本来、権力者が国民に命令を与えて国民を束縛するためにあるものではなく、国民の側から権力者に命令を与えて、権力者を縛るためにある」という宮台氏の説明が、オーソドックスな憲法学からの正しい解答で、そうであれば当然、国民の義務をもっと盛り込めという議論はナンセンスということになる。歴史的にも、マグナカルタなど、近代的な憲法の起源とされるものは、みな支配される側から支配者に押しつけた要求として成立している。  この後もずっと書かれているので、読んでみてください。 ************************************************************************** 2.世界最先端って本当? …

続きを読む

憲法って何?

 日本国憲法の改悪が日程にのぼってきたようだ。私は改憲に反対である。アメリカの、あたかも従属国のような日本国家のあり方をみるにつけ、もしこれで改憲されたらアメリカの命令のままにアメリカの戦争に参加させられる、という危惧をもつからだ。これからしばらく改憲問題について発言を続ける。 ******************************************************************* 1.憲法って何?  憲法って何ですかって尋ねられたとき、あなたならどう答えますか?  私なら、「憲法って、政府などの公的機関に人権を守りなさいって命令しているもの」と答えます。たとえば日本国憲法の第21条には、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない」と書いてあります。ここには主語が省略されています。当たり前のことなので省いているのです。表現の自由を保障するのは政府などの公的権力、検閲をしてはいけないといわれているのも、政府などの公的権力なのです。  このように、憲法って、政府や公的機関に「こうしてはいけないよ」、「こうしなさいよ」って命令するものなのです。  憲法の教科書には、憲法とは「国家権力を制限し一定の権能を各国家機関に授権する法、制限し授権することによって人権を保障する法、であるところに本質がある」(芦部信喜『憲法』岩波書店)と書かれています。  だからこそ、日本国憲法第9…

続きを読む

太陽の光を浴びて、朱に輝いていた空

 国道一号線を西に走らせていたとき、大井川を越えたあたりで、西の空が朱に輝いていました。美しい夕焼けを見ると、生まれてきてよかったなあと思うことがありますが、今日の夕焼けはまさにその美しさでした。  太陽はいつも輝いていますが、雲がないとこうはなりません。美しく輝かせるためには、太陽の光を反射する雲が必要です。  改憲の動きが急ピッチで進む気配がありますが、いくら日本国憲法が輝いていても、それを反射しより輝かせるためには、多くの人々の力が必要です。  改憲の目標は、憲法9条2項です。日本が自衛隊を法的に軍隊としたとき、待ってましたとばかりにアメリカ軍は自らの一部として自衛隊を使い始めるでしょう。海上自衛隊や航空自衛隊の装備は、在日米軍の補完用です。そのようにアメリカ軍によって育てられてきました。  憲法があれば、まだ詭弁ではあっても「憲法があるから「非戦闘地域」でないと派遣できません」と言えます。国連の傘下なら自衛隊を海外に派遣しても良い、という考えの方もいるかも知れません。しかし、自衛隊のイラク派遣で、それはなくなりました。国連の指揮下でないところへの派兵が行われたのです。そしてそれは先例になりました。  日本の自衛隊は、おそらく独立して海外へは派遣できないでしょう。アメリカ軍の下に、あるいはアメリカ軍の許可の下に派遣されます。  どこであっても、大地が血で覆われるという事態だけは避けたい。少なくとも、自衛隊によって、あるいは自衛隊員が、そうなって欲しくはな…

続きを読む

【本】小林武『早わかり日本国憲法』(かもがわ出版) 600円+税

 9月11日を投票日とした総選挙は、郵政民営化問題だけではなく、様々な問題を争点とする。そのなかにもちろん改憲問題がある。  日本国憲法、これは義務教育、高等学校でも学ぶ。しかし憲法ばかりやっていることは出来ないから、そう詳しく学ぶことはない。おそらく多くの人々は、憲法ということばは知っていてもその内容を詳しく思い浮かべることはできないだろう。  憲法は、最高法規であり、国家のあり方を規定するものである。その憲法について改憲が唱えられているのであるから、真剣に憲法についての認識を深めておく必要がある。  しかしだからといって憲法の解説書を読むのは、なかなかたいへんである。事実、法学部などで使用される憲法の専門書は、かなり分厚い物だ。本当は、そういう本を繙くことも必要であろうが、ここに憲法の内容を条文毎に解説を加えた本が出版された。  この本は、愛知大学法科大学院教授の小林武氏(憲法学専攻)が、条文毎に短い解説文を記したものである。それぞれの条文がいうところの本質的な内容を簡潔な文でまとめていて、憲法のそれぞれの条文理解に便利な解説になっている。  また条文の後に、その条文がもつ現代的な意義を表す見出しが掲げられている。例えば18条の奴隷的拘束と苦役からの自由については「徴兵も徴用も許されない」、25条の生存権の見出しは「強者本位の政治に抗して弱者を支える」というように、それぞれの見出しには現在の否定的な憲法状況を厳しく見つめる憲法学者の眼光がある。  この本は、『中日新…

続きを読む

【本】『憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言』(岩波書店)

 長い書名であるが、それぞれ含蓄のある文を書いている。  ペシャワールの会の中村哲氏の文は、実際にアフガンで行動しているが故に、きわめて説得力がある。「普通の国にしよう」という人たちの“平和ボケ”を指摘するあたりは厳しい反論になっている。  姜尚中氏の、一生涯武器を持たずにいられることの幸せを指摘する。  東京新聞記者、半田滋氏の「北朝鮮を見る眼」も説得力がある。冷静に国際情勢を見ることの必要性を指摘している。政府などは、はっきりと国民を扇動している。  その他、18人それぞれが、憲法9条への想いを記している。  この憲法問題も、総選挙の争点である。私は改憲反対である。

続きを読む

静岡新聞の改憲論

 『世界』7月号の座談会「改憲潮流の中のメディア」を読んでいたら、新聞社で改憲論は、「読売」、「日経」、「産経」、「北国」の4社であったが、今年「静岡新聞」が加わったとある。確かにそうだ。だが静岡新聞は、基本的に改憲派であることは、静岡新聞社の歴史をみれば判明する。  たとえば、「静岡新聞」は以前社説を持っていなかった。そのかわりに、「論壇」という欄があり、そこには高山岩男、来栖弘臣、屋山太郎ら右派「文化人」、もと軍人らが思う存分書いていた。改憲をはるかに超えた論が展開されていた。したがって、静岡新聞が改憲論を社説で主張したからといって驚くにはあたらない。  さて改憲論を唱えた社説であるが、それは今年の5月3、4日の両日にわたって書かれていたものである。   初日の社説(上)はまだ筋が通っている。ただし、憲法改正は「タブー視されてきた」ことを前提として主張し、「自民党でさえ、タブー視してきたきらいがある」と記す。しかし別にタブー視されていたわけではない。自民党が改憲を主張するような政治社会情勢がなかったからであって、改憲しようという勢力の方がタブー視したのである。つまり護憲の声が大きかったから、改憲を主張できなかったのである。社説でも「平和も経済繁栄も、自由で開かれた社会も、この平和憲法のお陰だったことは否定しないし、忘れてはならない」とある。その通りである。改憲の必要性はないのである。  (上)では、改憲について議論していこうというスタンスであるからまだいい。  ところが、(下)は、た…

続きを読む

【本】瀬戸内寂聴・鶴見俊輔『千年の京から「憲法九条」』(かもがわ出版)

 瀬戸内が書いた『美は乱調にあり』が好きだ。大杉栄と共に関東大震災のさなか、甘粕に殺された伊藤野枝のいわば伝記である。もう一つ、『比叡』もよい。文学が芸術であると実感した本である。その瀬戸内と、鶴見の対談が本書である。  この本の基本は、二人が元気に憲法9条の擁護を打ち出していることである。鶴見も瀬戸内も、「決定的なときが来たら」座り込みも投獄も辞さないと言う。瀬戸内は、「お母さんしゃくにさわるから隣の○○ちゃんを殺しに行っていい?」と訊いたら、「いいよ、殺しておいで」なんて言わないでしょう、という。日々の生活の中から「平和の論理」をさらっという。  鶴見は、日本の言葉の歴史から、平和を考えようという。  瀬戸内はあとがきで「現憲法は国民が主権である。そして何より輝かしいのは、九条の戦争放棄の宣言こそ、あの戦争で犠牲になって命を落とした敵味方なく、すべての戦死者たちの魂への懺悔と誓いであった。そこには深い祈りがこめられている。それなのに今やこの憲法が改制されそうで、九条の立脚が危なくなっている。・・・・・私たち戦争の生き残りの老人たちは、嫌われてもののしられても、戦争反対を、九条改制反対を言いつづけなければならない」と書く。  「改制」ははじめてみた熟語。造語だろうか。「改正」ではないから、この字なのだろうか。ところどころに校正ミスがあるので、定かではない。  静岡には、大杉栄、伊藤野枝らの墓がある。その墓前祭で瀬戸内の講演会を開催したことがある。その時、駅に送る車の中で、瀬戸内…

続きを読む

自民党憲法調査会の議論

  『論座』6月号に、改憲問題に関して「自民党議員はこんなことを言っている」という箇所があった。自民党の議員が、憲法に関していろいろな意見を言っているのだが、どうも理解しがたい。何を言おうとしているのか、その趣旨がつかめない。たとえば西川京子参議院議員の「現行憲法は、日本人の魂を否定するための憲法であったわけで、憲法を読んでいて一番感じることは、生きた憲法ではない、無味乾燥、バーチャル憲法だと。そこに生きた人類の歴史なり、生きた人間の生活が本当に感じられない憲法」という文が掲げられている。しかし何を言おうとしているのか判然としない。「自民党憲法調査会」で検索して、自民党HPでみたら同じ文であった。私は要約してこういうわけのわからない文章になったのかと思ったのだが、どうもそうではないようだ。「生きた憲法」ってどういうものか、「バーチャル憲法」って何?、「人類の歴史なり、生きた人間の生活が感じられ」る憲法って、どういう憲法?わからないことだらけだ。   その他の議論も、粗雑で、思いが先行し、それを裏付ける論理が不足している。   衆参議院に設置された憲法調査会では、「学級崩壊状態」がみられたそうである。特に自民党議員の出席の悪さはひどかったようで、居眠り、私語、席替え、週刊誌読み、中抜き、途中退出などが横行していたようだ(高田健「いったい何を調査したのか」、『世界』6月号)。  今空疎な勇ましい議論が横行し始めている。そのような議論が社会に横溢した時代を、日本は経験している。だが、そんな…

続きを読む