【本】金平茂紀『テレビニュースは終わらない』(集英社新書)

 大変良い本である。マスコミ関係者、特にテレビに関係している人々、マスメディアに関心を抱いている人には、必読である。

 第一章 現代の戦争報道
 第二章 政治権力と報道
 第三章 荒野から

 イラク戦争開戦時、世界のメディアが従軍記者となってアメリカの側からの報道を行った。何かを見るとき、何かを撮影するとき、何かを報道しようとするとき、どういう視点から、というのはきわめて重要である。イラク戦争の際、アメリカ軍の統制下に従軍してなされた報道は、報道として成り立つか。報道する記者たちの目は、明らかに攻撃する側のまなざしからのものであった。日本に流されたのは、アメリカ軍のまなざしのものがほとんどであった。特にNHKのニュースは、軍事評論家と一緒になって、アメリカ軍はこの後どういうように進軍するか、というものであって、戦火の中に苦しむイラク民衆の姿はなかった。

 それから日本人人質事件の「自己責任論」。マスメディアは、日本国家の責務を追及せず、犯罪被害者を断罪した。当時のパウエル国務長官の発言がまっとうなものであったにもかかわらず、そういう常識的な批評はほとんどなされなかった。

 イラク戦争時のマスメディアの動向は検証に値すると、私は思っている。その点で、本書はその問題点を具体的に示している。

 次は、アメリカの大統領選挙とテレビメディアとの関係である。日本においても、選挙とテレビメディアとの関係が、あの小泉選挙以降問題視されるようになった。アメリカのそれをつぶさに見てきた金平氏の記述から、その問題点が見えてくる。

 それから、日本のマスメディアの立脚点が、1995年の地下鉄サリン事件、2001年9・11事件、2002年の北朝鮮の邦人拉致認定、を契機にかわったとする。それ以降、セキュリティが最優先されることとなったのだ。

 そのなかで、ロシアのアンナ・ポリトコフスカヤ記者の事件、アルジャジーラのタイシル・アルーニ記者、日本の西山太吉記者の三人は、命をかけて報道し、なかには殺された記者もいる。

 金平は、「私たちはそもそもいったい誰のために報道しているのか?マスメディアは誰の利益を代弁しているのか?・・・・・・」と自問する。

 この自問は、私たちがマスメディアを考えるときの基準にもなりうる。

 

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